自治会役員のなり手不足|断られたときの進め方と免除の基準
次年度の役員がなかなか決まらない。心当たりの人に頼んでも、次々に断られる。会長や選考の担当をしていると、毎年この時期に頭を抱えます。「役員のなり手がいない」という悩みは、いまや多くの自治会・町内会に共通しています。
この記事では、他の会がとっている決め方の工夫、役員の仕事を減らす・分けるやり方、免除や軽減の基準の作り方、そして頼んで断られたあとの進め方を整理します。役員会でそのまま使える「内規のひな形」と「打ち手リスト」も、本文に全文載せています。
なぜ役員の「なり手がいない」のか
まず、これはあなたの会だけの問題ではありません。
総務省に「地域コミュニティに関する研究会 報告書」という資料があります。2022年4月に公表されました。全国におよそ30万ある自治会・町内会の多くが、加入率の低下と担い手不足を課題にあげています。加入率は、総務省の調査で、2010年ごろは8割近くありました。それが2020年ごろには、7割を少し超える程度まで下がったとされています。共働きの世帯が増え、住民の高齢化が進み、近所づきあいの濃さや地域活動への向き合い方も変わりました。この報告書は、担い手が減る理由を「住民側の大きな流れ」と「会の運営のやり方」の両面から整理しています。
つまり、役員が決まらないのは、役員の熱意や住民の意識が足りないからではありません。時間の余裕がない人が増え、責任の重さが見えにくく、断りづらい。この仕組みのほうに理由があります。個人が抱え込んで自分を責める話ではない、とまず押さえてください。
そのうえで、会としてできることを考えます。手を打つ順番は、大きく3つです。1つ目は、役員の仕事そのものを減らす・分けること。2つ目は、免除や軽減の線を文書で引くこと。3つ目は、頼み方と、断られたあとの進め方を決めておくことです。
最初にやるのは、役員の仕事を紙に書き出すことです。役職ごとに「毎月やること」「年に一度やること」「かかる時間の目安」を並べます。何が重いのか分からないままでは、減らす相談も頼む相談も進みません。
役員の仕事を「減らす・分ける」
なり手を探す前に、仕事の量を見直します。次は、今日の役員会でそのまま提案できる打ち手です。
- 会長の仕事を2人で分ける。対外の窓口(行政や連合会とのやり取り)と、会内のとりまとめを、別の人が受け持ちます。「共同代表」にする会もあります。
- 任期と改選の仕方を見直す。1年を2年にすると「覚えたころに終わる」を防げます。ただし「2年は重い」という声も根強く、両論あります。全員が同時に代わらず、半数ずつ交代する形もあります。
- 行事を1つ、休むか隔年(2年に1回)にする。減らすかどうかの物差しは3つです。参加する人の数、準備にかかる役員の手間、会費からの持ち出し額。3つのうち2つが重ければ、一度休みます。
- 「役員」と「当日だけの手伝い」を分ける。受付や片づけなどは、役職にせず単発のお願いにして、会員に広く声をかけます。役ではないので引き受けやすくなります。
- 役員会を毎月から隔月(2か月に1回)にする。間の連絡は回覧や電話連絡網で足ります。
- 作業の一部を有料で外に頼む。記帳、印刷、封入などです。シルバー人材センターや印刷業者に頼めます。お金はかかりますが、人は探さなくてよくなります。
- 役職ごとの引き継ぎ書をつくる。「毎月やること」「年に一度やること」「連絡先」を役ごとに1枚にまとめます。1年目の負担がぐっと軽くなります。
役員報酬・手当をどう考えるか
「ボランティアだから無報酬」という前提が、地域によっては続けにくくなっています。役を引き受ける負担に、少しでも見合うものを、という考え方です。
出し方には、行事のときの日当、年額の手当、会長や会計など重い役への謝金などがあります。金額は会の規模や活動量で大きく開くため、この記事では目安の額は示しません。ただし、規模ごとのおおまかな傾向はあります。世帯数の少ない会は、報酬を出さないか、出しても交通費などの「車代」にとどめる例が多いです。会長や会計など負担の重い役にだけ、寸志(すんし。少額のお礼)を出す会もあります。まとまった年額の手当を出すのは、世帯数が多く、事務の量も多い会に多く見られます。まずは自分の会の規模と仕事量を、近い規模のよその会と見比べるところから考えます。
お金の出どころは、会費か繰越金です。総会で「なぜ出すのか」「いくらか」を説明できることが条件になります。税金は、受け取る額が一定を超えると所得税や住民税の申告が必要になる場合があります。詳しくは税務署や市区町村の窓口でご確認ください。
出したほうがよいかどうかは、両論があります。「手当を出したら引き受け手が戻った」という会もあれば、「かえって『金目当て』と陰口が出て、やりにくくなった」という会もあります。出す・出さないは、会の雰囲気を見て総会で決めます。手当を出す場合、その支出を予算・決算のどの費目に入れるかは、「自治会の会計報告書の書き方|収支決算書の見本と記入のコツ」の費目の分け方が参考になります。
決め方の選択肢を比べる
役員の決め方には、大きく4つあります。多くの会は、いくつかを組み合わせています。
- 輪番(順番)。地図の順やくじで、次の番の世帯を決めます。だれの番か分かりやすく、不公平感が出にくいのが長所です。もめやすいのは、「うちは事情がある」という申し出の扱いです。世帯数が数十から100くらいまでの、顔ぶれが安定した会に向きます。
- 立候補+指名。やる気のある人が中心になれます。もめやすいのは、だれも手を挙げず、その場の指名になって「押しつけられた」と残ることです。担い手の層が比較的厚い会に向きます。
- 推薦・選考委員会。数人の委員が、改選の半年ほど前から候補を探して打診します。断られたときの次の一手を、組織として動けます。もめやすいのは、委員のなり手です。世帯数が多く、毎回難航する会に向きます。
- 役職ごとの公募。「会計」「広報」など役ごとに募集します。仕事の範囲がはっきりしていれば応募しやすくなります。もめやすいのは、人気のない役が最後まで残ることです。役の仕事が文章で整理できている会に向きます。
当てはめの目安です。小さい会は「輪番+しっかりした免除の基準」、大きい会は「選考委員会+役職ごとの公募」の組み合わせが、落としどころになりやすいです。ただし「これが正解」という形はありません。

免除・軽減の基準を文書にする
免除は、「誰を外すか」を毎年その場で決めると、必ずもめます。「どういう事情なら、猶予したり軽くしたりするか」を先に文章にしておきます。
免除・軽減の事由としてよくあるのは、次のようなものです。
- 一定の年齢以上(70歳、75歳など、会で線を引く)
- 在宅で家族の介護をしている
- 未就学の子どもを育てている
- 本人が病気・けが・障害で療養中
- 単身赴任や長期の入院など、長く自宅を離れる
- 直近で役員を務めたばかり(○年以内)
- ひとり親家庭
「免除」だけの二択にしないことが大事です。「1年見送る(猶予)」「軽い役に振り替える」「班や隣近所で手伝う」も選択肢に入れます。
役をやらない代わりに一定額を会に納めてもらう「役員協力金(不参加分担金)」という方法もあります。ただし、額が高すぎると退会につながります。一般に、自治会は入るかどうかが本人の意思による団体とされています。協力金の支払いを強制したり、納めないことを理由に退会させたり不利益な扱いをしたりはできないと考えられています。会の申し合わせとして、無理のない額で、任意で、という形にします。判断に迷うときは、市区町村の窓口や法律相談にご確認ください。
決め方の順序は、役員会で叩き台をつくる、総会にかけて承認する、会則か内規(会則の下の細かい取り決め)に書く、です。決めたことは議事録に残します。
なぜ文書にするのか。役員が相手の顔を見て情で判断すると、翌年「あの人は免除されたのに」という不満が出ます。文章で線を引いておけば、頼む側も断る側も、角が立ちません。
そのまま使える「役員の免除・軽減の内規」のひな形
これは叩き台です。役員会で自分の会に合う形に直し、総会で承認してから使ってください。
【役員の免除・軽減に関する内規(ひな形)】 (目的) 第1条 この内規は、○○自治会の役員を選ぶにあたり、家庭の事情などで引き受けが難しい会員の負担を軽くするための取り扱いを定める。 (対象となる事由) 第2条 次のいずれかに当てはまる会員は、役員の免除または軽減を申し出ることができる。 (1) 満○○歳以上の人 (2) 在宅で家族の介護をしている人 (3) 未就学の子どもを養育している人 (4) 本人が病気・けが・障害で療養中の人 (5) 単身赴任・長期入院など、○か月以上自宅を離れる人 (6) 直近○年以内に役員(○○以上の役)を務めた人 (7) ひとり親で子どもを養育している人 (8) その他、役員会が上記に準じると認めた事由 (軽減の内容) 第3条 申し出があったときは、事情に応じて次のいずれかを適用する。 (1) 免除(その年度は役を割り当てない) (2) 猶予(順番を○年遅らせる) (3) 軽減(負担の軽い役に振り替える) (4) 別の関わり方(行事の当日だけの手伝いなど) (申し出の方法) 第4条 免除・軽減を希望する人は、役員改選の○か月前までに、□□(会長・班長など)へ口頭または書面で申し出る。書式は問わない。 (決定する場) 第5条 申し出の可否は、(役員会 / 役員会で確認し総会で報告 / 総会)で決める。決めた内容は議事録に残す。 (役員協力金)※設ける場合のみ 第6条 免除を受けた会員は、その年度に限り、役員協力金として○○円を会に納めることができる。納付は任意とし、納めないことを理由に不利益な取り扱いはしない。 (見直し) 第7条 この内規は、必要に応じて役員会が見直し案をつくり、総会の承認を得て改める。 附則 この内規は、○年○月の総会で承認された日から実施する。

頼み方と、断られたときの進め方
打診は、改選の3〜4か月前から始めます。ぎりぎりに頼むと「もう時間がない」と受け取られ、かえって断られやすくなります。
口頭だけで頼まず、紙を1枚渡します。書くのは次のことです。
- 役の名前
- おもな仕事(毎月やること・年に一度やること)
- 年間のだいたいの予定と、月あたりの所要時間の目安
- 任期
- 引き継ぎ書があるかどうか
- 相談できる相手(前任者や、近い役の人)
そのうえで、数日考えてもらいます。ここからが本題です。頼んで断られたら、次の順で進めます。玄関先でのやり取りとして書きます。
1. 理由を否定しない。こちらから先に言う。
「お母さまの介護がおありなのは存じています。そこへ会長をお願いするのは、こちらも心苦しいのですが……」
2. 「できる範囲」を一緒に探す。
「会長は難しくても、会計監査なら年に2回、総会の前だけです」
「1年だけ、副会長を2人にして、半分ずつ持っていただく形はどうでしょう」
「行事のときの受付だけ、というお願いの仕方もあります」
3. その場で答えを求めない。
「今すぐお返事でなくて構いません。1週間ほどして、またうかがいます」
4. 家族に相談する余地を残す。
「ご家族ともお話しになってみてください。ご本人がよくても、ご家族が心配される場合もありますから」
5. それでも無理なら、深追いしない。
「わかりました。ご事情が変わったら、また声をかけさせてください」

強く食い下がると、次の年はもっと頼みにくくなります。関係を残すことを優先します。同じ人に2回断られたら、いったん候補から外し、次の人へ移ります。
どうしても決まらないとき、よその会がやったこと
打つ手を尽くしても決まらないことはあります。次は、口にしにくいけれど、現実にある選択肢です。淡々と並べます。
- 会長を置かず、役員の合議制で1年回した。1人に重みが偏らないよう、司会を当番で回しました。
- 市区町村の担当課に相談した。自治振興課、地域振興課など、名前は市区町村で違います。自治会が回らないと行政も困るため、相談に乗ってもらえることがあります。まず頼めるのは、市区町村がつくっている「自治会・町内会運営の手引き」(冊子)をもらうことです。免除の考え方や規約の例、会計の様式まで載っています。ほかに、災害時の要支援者名簿の扱い、防災訓練の段取りも相談できます。集会所の維持や修繕は、建物が市区町村のものか自治会のものかで、頼めることが変わります。市区町村の広報紙の配布は、委託先の切り替え(業者への委託など)を相談できます。「何もかも」ではなく「この部分を」と持ちかけます。
- 作業の一部を外部に委託した(費用はかかるが、担い手を探さずにすむ)。
- 自治会をいったん休止した。近隣の会と合併した。班をまとめて再編した。
- 「できることだけやる自治会」に縮小すると総会で宣言した。回覧と会費の管理と防災は続け、行事は有志が集まったときだけ、という形です。
どれも「負け」ではなく、会を続けるための選択肢です。いずれも総会にかけて会員の合意を得る点は共通します。候補が決まったあとの、総会での選任のはかり方や議事録への残し方は、「自治会総会の議事録の書き方|委任状のひな形と定足数の基本」にまとめています。
まとめ|今日の役員会で決められる小さな一手
- 役員のなり手不足は全国に共通し、会の努力不足ではありません。まず仕事を紙に書き出し、減らせる・分けられるものを探します。
- 免除・軽減は「情」ではなく「文書」で決めます。役員会で叩き台をつくり、総会で承認して内規にします。
- 断られたら、理由を否定せず「できる範囲」を一緒に探します。その場で答えを求めず、深追いはしません。
- 役員選考は、仕事の棚卸し、基準の確認と打診、総会での選任、という順で1年かけて進みます。

この記事は、読んで「なるほど」で終わりやすいテーマです。最後に、今日の役員会で決められる小さな一手をあげます。
- 役員会を毎月から隔月にする、と決める
- 次の行事から1つ、休むか隔年にするものを選ぶ
- 下の「打ち手リスト」と免除・軽減の内規のひな形を人数分コピーして配り、次回に持ち寄る
- 「当日だけの手伝い」の募集を、次の回覧に載せる
決まった役員を会員に知らせる文面は、「自治会のお知らせ文例集|総会案内・会費集金・清掃当番の例文」のお知らせ文の型を使って書けます。
【役員の仕事を「減らす・分ける」打ち手リスト(チェックシート)】
役員会で1つずつ「やる/やらない/保留」を書き込んでください。
- □ 会長の仕事を2人で分ける(対外の窓口/会内のとりまとめ)
- □ 副会長・共同代表を複数にして分担する
- □ 任期や改選の仕方を見直す(複数年任期/半数ずつ交代 ※負担増の意見も出るので両論で)
- □ 行事を1つ、休むか隔年にする(物差し=参加人数/役員の手間/会費の持ち出し)
- □ 行事のやり方を簡素にする(時間短縮など)
- □ 「役員」と「当日だけの手伝い」を分け、後者を会員に広く募集する
- □ 役員会を毎月から隔月にする
- □ 会計の記帳・印刷・封入など作業の一部を有料で外部に頼む
- □ 役職ごとの引き継ぎ書を1枚ずつつくる
- □ 役員報酬・手当を出すかどうかを総会の議題にする(額は会の規模・仕事量から検討。近い規模のよその会を目安に)
- □ 免除・軽減の基準を文書にする(叩き台→総会承認→内規)
- □ 決め方を見直す(輪番/立候補+指名/選考委員会/役職ごとの公募 の組み合わせ)
- □ 市区町村の担当課に「この部分を手伝ってほしい」と具体的に相談する
参考にした公的資料
この記事の背景となる数字や整理は、次の公的資料をもとにしています。


